7.認定方式の人事評価制度
Updated on 4/21/98

 我々がこのような常識外れの人事評価制度を進めるようになったのは、先にも述べた既存の人事評価制度の限界に気づいたことと同時に以下の様な経緯があります。つまり当社でも様々な人事評価表を作成してきましたが、どのような方式を採用しても合理的に部門間調整ができないという課題にぶつかりました。つまり人事評価表を用いて点数化したとしても部門間の差は見ることができず、結局は全部門に目が届くトップが調整を行ってきました。ということは人事評価表はあくまでも評価結果を裏付けるための材料でしかないのではないか?それであればそもそも点数化することに意味はないのではないか?ということで評価するポイントをまとめたガイドラインを作成した上で相対評価を行い、それを評価結果認定の理由にしようしたらどうだろうか、という考えに至ったわけです。
 さて具体的な認定方式人事評価制度の流れは以下の通りになります。
a)ガイドラインの作成(その他目標管理表などリソースの提供)
 認定方式の基本は「相対評価で基準は作らない。評価の基準は現場で決めてもらって結構。但し会社を納得させる材料を出して来なさい。」というところにありますが、その理由付けを行う際にどのような手段が考えられるか、会社が評価者の相談に乗るということは重要です。つまり評価を行う際の視点(ガイドライン)を等級別などである程度作ったり、目標管理表などのツール(リソース)を提供することは実際の認定活動を行う際に有用です。このガイドラインは通常、「当社のハイパフォーマー(成績優秀者)の行動様式(具体的にどのような思考を持ち、どのような行動を取り、どのような結果を残しているか)」を明示することによって行います。なお目標管理表等のサンプルはこちらの書式集にあります。)

b)相対評価で評価マトリックス作成
 自社(自部門)の従業員の過去半期(または通期)の評価を相対的に決定し、以下の表にまとめます。この際、評価は加点評価で行うことが原則です。

c)評価結果理由書を面談を通じ作成
 相対評価を行ったら、次はその具体的な理由を「評価結果理由書」に明示します。その際には先にも述べたように具体的に「どのような行動を取り、どのような結果を出したのか」という事績を明らかにすることが重要です。間違っても「頑張った」「良くやった」という理由を挙げてはいけません。(評価結果理由書は特に決められたフォーマットはありません。白紙でも構いません。ただ当社では従業員をこういった視点で評価しますという視点程度は書いておいた方が親切でしょう。なおサンプルはこちらの書式集にあります。)

d)評価決定委員会での結果摺り合わせ・評価決定
 各部門の評価者がその評価結果を社長が座長を務める「評価決定委員会」に持ち寄り、結果のすりあわせを行います。最終的に評価者が他の委員会メンバーに自分の決めた評価結果を納得させることができれば、その評価は確定します。その際、当然評価者の甘辛が発生しますが、それは委員会メンバーの合議で調整します。
例)評価が甘いAという評価者が部下のB君に+2の評価を与えたとします。Aさんが評価委員会にB君の評価は+2という結果を持参したところ、他のメンバーが「B君は当社全体のバランスからすれば+1が相当である」との意見を述べました。ここでAさんは具体的に「B君は今期○○という行動を取って、○○という成果を挙げたから+2にした」という理由を述べます。Aさんがこのように具体的な成果や事績をもって他のメンバーを説得し「その様な理由があればB君は+2の評価が相当だ」と納得させることができれば、B君の評価は「評価決定委員会」で+2と認定されるわけです。
 この具体的な成果や事績を明確にし、評価決定委員会でその成果を認定するというプロセスが人事評価結果の公平性・客観性を担保する1つめの歯止めになります。

e)プラス評価者の社内公表
 全従業員の人事評価結果が決定したら、その中でプラスの評価を取った従業員の名前と評価、そしてその理由を全社に公表します。これによって具体的にこのような成果を挙げた者は当社では正当に評価されるということを告知し、翌期以降の従業員の前向きな改善活動に繋げます。
 また、この認定方式の人事評価制度ははじめは全く基準はありませんが、この活動を何度も繰り返していく中で社内に「当社の望ましい従業員像」という共通の価値観が醸成されてきます。言うなれば判例法の発想に近いかも知れません。
 なおこの全社発表という仕組みが「従業員に発表する以上、理由が曖昧なままで評価をすることはできない」という人事評価の公平性・客観性を担保するもう1つの歯止めになることは言うまでもありません。

f)評価フォロー表の作成、フォロー
 そして最後に従業員に「今回の評価は納得できるものでしたか?」「上司は納得のいく説明をしてくれましたか?」「上司は仕事の目標を与えてくれていますか?」という様な内容のアンケート(評価フォロー表)を直接社長または総務まで提出してもらい、その意見、不満を収集、そのフォローを行います。これまでも人事評価時の面談等は行われていましたがなかなかその結果に対するフォローまでは手が回らなかったのではないでしょうか?しかし実際には人事評価及びその結果についてのフォローを行い、その納得感を高めるという施策は非常に重要です。具体的にはこの内容をもとに評価者と社長もしくは総務部長の面談を行い、評価者の問題点を指摘し、部下への接し方、目標の与え方、分析的に部下の行動を見る訓練などを行います。このように評価者個別の問題点を解消し、部下との面談を身にあるものにしてあげることこそが本当の意味の考課者訓練ではないでしょうか。なお評価フォロー表のサンプルはこちらの書式集にあります。)

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