6.絶対評価は幻想
Updated on 4/21/98

 世間の人事評価制度の本を読むと「人事評価は絶対評価を行わなければいけない。他人と比べてはダメだ。」と必ず書いてありますが、本当に他人と比べない絶対評価が可能であればその方法を教えて欲しいものです。例えば「営業の評価については全員0からよーいドンでスタートして回収ベースの粗利の高さだけで行う。担当先の割り当ても会社からは行わない。全くの自由競争だ。」という様な特殊な状況であれば絶対評価が可能かも知れませんが、通常は様々の異なった仕事を担当している従業員を様々な視点で1つのまな板に乗せて総合的に評価しますので、絶対評価は不可能だと私は思っています。
 さて絶対評価を行うことが不可能であるのであれば、絶対評価でない方法で、少しでも客観性を担保できる別の方法を考えるべきです。絶対評価は不可能であるにも関わらず少しでもベターにしようと、より詳細な基準を作り込んでいくというのが、全ての間違いの始まりです。そこで当社が最近進めている人事評価制度が「認定方式」と呼んでいる方法です。
 皆さんの会社の従業員や部下について、良くできる順で、1番から最下位まで思いつくまま順番を付けてみて下さい。通常は特に基準など用いなくても「A君が1番で、B君はCさんに比べると少し劣るな」という様に何らかの順番が付くことだろうと思います。人事評価は基本的にはこのように『相対評価』で行えば良いのです。ただ、これだけでは個人の恣意が大きく入ってしまいますので、客観性に欠け、従業員に発表もできません。そこで一定の縛りをかける必要があります。そこでポイントになるのが「認定」という考え方です。
 今、皆さんに行って頂いた順位付けを簡単にまとめると以下の表の様になります。

 例えば営業で最も良い評価である「+2」を取ったA君はなぜ「+2」の評価を取ったのでしょうか?皆さんの頭の中には何らかの理由があるはずです。抜群の営業成績を収めたのか、新しい販路を開拓したのか、新商品を開発したのか、どの様な理由が上がるかは分かりませんが確実にA君がB君やCさんに比べて良い評価を受けた理由があるはずです。それを個別に明確にして「だからA君を+2と認定する」という方法が「認定方式」の評価制度になります。
 その際、絶対に必要なことは認定の材料(理由)は「この半期(評価期間)に挙げた具体的成果もしくは具体的行動」のみを取り上げるということです。この認定方式の人事評価制度を入れて間もないうちはどうしても「頑張った」とか「よくやった」という理由を挙げがちです。しかしそれでは評価を決める理由としてはあまりに曖昧で、他のメンバーを説得不十分です。またそもそも従業員はみんなその人なりに頑張っています。基本的に頑張っていない人などいないのです。

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