時代の節目における人材戦略
〜97年2月7日実施のセミナーレジュメ〜
Updated on 2/22/98

第1章 労働環境の変化
1.21世紀に向けて変わる労働環境
1)雇用体制の変化と流動化
・1年以上の有期労働契約が可能に?(期間契約社員の増加)
・65歳定年制定着(厚生年金65歳支給)
・退職金税制や企業年金のポータブル化(転職の不利解消)
2)ワークスタイルの変化
・裁量労働制の枠拡大(ホワイトカラーの大部分?)
・SOHOが発展(自宅勤務が定着)
・ワークシェアリング(雇用リスクと社会保険料負担回避)
3)女性の社会進出本格化
・男女差別の徹底排除(男女雇用機会均等法強化。男女逆差別の解消)
・女子保護規定の廃止(時間制限など)
・配偶者(妻)の税制等優遇措置の廃止?(社会参加抑制制度の撤廃)
・年金の第3号(扶養家族配偶者の国民年金保険料免除)制度の廃止?
・家族手当の所得制限が違法に?(女性の社会進出を阻むという理由)
以上による労働環境変化の結果として、次のようなことが考えられます。
・時間の長さではなく成果や職務価値で業績が評価される
・同一職務価値=同一処遇が進む(年功は無視されていく)
・限られたコア社員だけが終身雇用に(アウトソーシングが隆盛)
・使用従属関係から委任委託関係へ(雇用と外注の区別がつかない)
・企業の枠組みが崩れ、ネットワークで生きる人が続出
・ 企業は「管理」から「場」を提供する存在に

2. ニュータイプの人事制度
1)オールドタイプの志向
 オールドタイプというのは、ピラミッド型の組織や社会体制で有効であったノウハウや実証されたスキームを志向するものです。等級制度、集団管理、時間を軸とした賃金管理、モデル賃金、職能給、人事考課、職階制、役職制、定年などなど。つまり統制や秩序を維持する方向で考案されたものはこの範疇になります。
 例えば次のような発想やスタンスはオールドタイプといえます。
□何らかの等級(ランキング)制度が必要と思う。(能力、職階、役職、身分など)
□能力主義を実現するためには能力基準を設定する必要がある。
□いかにして正確に能力を測定するかが重要だ。
□昇給や賞与は査定して差をつけなければ社員はヤル気がなくなる。
□どうやったら社員がもっと一所懸命働くだろうか。
□将来どのくらいになるかが判る賃金モデルが必要だ。
□部長と係長の年収が逆転するのはおかしい。
□上位者は下位者より昇給額が高くなければおかしい。
□年齢を基準にした人事処遇は必要だ。(年齢給、年次管理、定年など)
□自己都合で辞めるのなら退職金は減額すべき。
□人事評価は標準を設定し、それと比べて上下をつけなければならない。
□若いウチは能力差などつけられないのでほぼ一律処遇にする。
□上司が部下の能力査定をするのは常識。
2)ニュータイプの志向
 ニュータイプは、オープン性、ネットワーク型、反体制、プロジェクト型、ボスレス組織、規制緩和、市場競争原理、選択、といったキーワードで発想された組織や制度になっています。代表的なところでは、米シリコンバレーの先進企業群、W.L.ゴアアソシエーツ、日本ではミスミ、前川製作所、ネミックラムダ、花王といった企業がこのニュータイプといえます。
 このニュータイプ企業の共通項は「自由と自己責任」です。個人尊重を貫くと同時に自己責任も問うています。そして「選択の場」を個人に提供するのが企業の役割となっています。象徴的なものに、次のようなプロジェクト型組織運営があります。
□企業が中期方針や解決課題を提示する。
□解決課題や新規事業を「やりたい人」が手を挙げ、所定の申請を行う。
□企業はそのプロジェクト発足の審査と承認、結果に対する報奨を含む契約を行う。
□社内(場合によっては社外にも)にチームメンバーを公募する。
□応募者が多い場合は発起人が選別を行う。
□逆にメンバーが集まらないプロジェクトは発足できない。
□いくつものプロジェクトに参加する人も出てくる。
□逆にどこからも声のかからない人も出る。
□プロジェクト内ではリーダーは自然発生的に決まる。
□役割やローカルルールも自然に決まっていく。
□プロジェクトは目的達成もしくは期限で解散する。
□プロジェクトの成果は相互評価にてプロジェクト内配分する。

第2章 新世界へ移住する準備
1.魅力ある経営スタイルと人事制度づくり
1)自由と自己責任の経営スタイル
2)「認められる」=「動機づけ要因」
3)賃金は衛生要因
4)制度に頼ると人事が弱体化する
5)人事制度だけの魅力はありえない〜会社自体の魅力

2.新しい賃金体系の構成
1)基本給体系
・累積賃金(年齢ではなくキャリアで考える)
・時価賃金(能力や職務価値で考える)
・年齢給は不当
・年俸制について
2)諸手当
3)賞 与
4)退職金

3.発想の転換による新賃金体系
1)一番の要件は「わかりやすい」こと
2)常識論では…年齢給+能力給+勤続給だが
3)これからの姿=累積賃金+時価賃金の組み合わせ
4)時間給発想の賃金体系〜能力時給月給制
5)生活補助手当がますます重要に?
6)累積賃金〜超簡単!「あみだくじ型」昇給システム
7)時価賃金〜マトリクスの設定と運用方法
8)時価賃金と賞与の話し
9)仮払い&精算方式の報酬制度

4.能力等級制度の考え方
1)能力主義の考え方〜「時価」という概念
2)時価を測定する基準〜絶対基準と相対基準
3)マトリクス法による絶対評価と相対評価
4)相対基準の設定と運用〜大相撲方式と人材特性表
5)「昇格セレモニー」の重要性

5.人事考課は必要か
1)昇給査定は本当に必要か?
2)「いかにして正確に評価するか」という視点の驕り
3)「公正」と「説得力」が基本
4)加点発想の評価方式へ〜ダメさ加減を測って何が面白い?
5)成果配分の基本〜「商売のいろは」を採り入れる

6.能力開発の意義と制度化
1)果たして我が社はどのような人材を育てていくのか
2)能力開発の基本は「認める」こと
3)「お膳立て」では限界が〜自由と自己責任の場づくり
4)「面接制度」で何をするか
5)目標管理制度は問題山積
6)「育てる」というより「場」を創出できるか

7.次世代への人事システムと人件費の変動費化
1)分権型組織
2)雇用をはずす「パートナー制度」
3)アウトソーシング
4)ワークシェアリング