未公開中堅中小企業のストックオプションの取り組み(5/23/97)

 5月16日、ストックオプション解禁の改正商法が国会で成立しました。既に株式を
公開している上場企業向けの自己株式(金庫株)方式は6月1日、これから株式公開
を狙う未公開企業向けのワラント権方式は10月1日より施行されます。
 しかし、残念なことに税制整備については「現在のところどうするかは未定であり
平成10年度税制改正での折衝になる(通産省)」とのことです。大蔵省は減税措置
には極めて消極的です。また公開後の売却時の株式譲渡益課税の源泉分離課税
選択制度廃止も来年度改正に盛り込みたいとしています。
 株式公開意向が明確で既に公開準備にとりかかっている企業は、税制整備にメド
が付くまで導入準備を凍結した方が良いという考え方もありますが、まだ具体的に
は考えていないが、10年後くらいには株式公開企業にしたいという気持ちがある
企業であれば、優秀な人材確保の手段としてまた既存の従業員の意識向上の手
段として今から検討を開始しても早すぎることはありません。
 ストックオプションの場合、実際に課税関係が発生するのは株式公開を果たして、
ストックオプションの権利を行使たり株式を売却してからです。またストックオプシ
ョンを付与する段階での直接的な費用は登録免許税のみですみます。将来、税制
の改悪が行われ、ストックオプションの効果がなくなったり、とても10年内には株
式公開が不可能だと判断すれば、交付したストックオプションを破棄すればすみます。
(交付時に会社が株式公開前に雇用関係を終了した時や、付与して10年経過したら
新株の発行ができない旨の契約をしておきます)
 
 全く株式を公開する意向の無いのにストックオプションを利用するのは従業員に対
する背信行為ですが、将来、事業を大きくしたいという夢をお持ちの企業は十分に検
討する余地があると思います。ストックオプションの権利行使期間は10年間は認め
られます。これからの10年間で間違いなく日本の経済構造が変革します。現状の延
長では成長が見込めなくても、これから新たなビジネスチャンスは無限にあるはずで
す。ただし、将来の株主構成に影響を与える可能性のある手法ですので、決して行き
当たりばったりで決めてはいけません。
 ・自社の現在の株主構成に問題ないかどうか。
 ・自社の現在の発行済株式数(資本金)が少なすぎることはないか。
 ・行使価格をいくらにするのか
 ・だれに何株付与するか
 現物の株式でないとは言え、身内以外の役員や従業員に潜在的な株式を付与すると
いうことは、経営意識を共有することになります。身内だけが株主である場合とはや
はり異なってきます。また、資本に関することをいったん実行すると後戻りはできま
せん。行使価格をいくらにするかについては、税務上の問題はもちろんですし、何年
かに分けて付与する場合などは、年々行使価格を上昇させるのか、一定価格にするの
かも重要な検討事項です。
 だれに何株という配分についてですが、社長の右腕のような既存の役員1人か2人
だけに付与するような場合は社長の独断でも構いませんが、業績結果に応じてとか、
これからスカウトする人材のインセンティブとして使用する場合には、人事評価制度
の中にストックオプション付与基準を作成し、不公平感を生じないようにする必要が
あるでしょう。
 
 ソニーは取締役対象に一昨年、去年と擬似ストックオプションを発行しました。一
昨年が5,300円、去年が7,000円です。5月19日の終値が9,800円で
す。役員一人当たりの含み資産は平均約4,000万円にもなります。トヨタも取締
役への付与から始めて、将来は従業員にも対象を広げる計画です。既に公開している
大企業はせいぜい株価が2、3倍になるのが限度でしょう。それに対して、これから
成長して株式公開を目指す企業は数十倍、数百倍になる可能性があるのです。日本企
業の活力を高めていくためにも、上場大企業だけでなく一つでも多くの中堅中小企業
がストックオプションの導入に踏み切ることを願っています。


 ストックオプションに関してのお問い合わせは株式会社名南経営 株式公開支援課 
株式公開コンサルタント 杉浦恵祐までemailにてお寄せ下さい。