資格にかかる業務独占の見直し
〜平成9年12月4日 行政改革委員会規制緩和小委員会報告書抜粋〜
Updated on 1/12/98

 我が国には行政書士や弁護士といった、資格名に「士」と付くものをはじめとして数多くの資格制度が存在する。これらの資格制度には、業務独占規程が定められているものも多い。
 これらの業務独占を有する資格制度は、高度に専門性のある業務や、国民の生活や安全に大きな影響を与えうる業務等に関して、試験を課すなどによって一定の資格者を定め、その規律に関して法律上で一定の規制を課した上で、業務独占を認めるものであり、これにより一般にサービスの質や安全性・信頼性の一定程度の高さが制度的に担保されるとされている。
 一方、こうした資格制度による独占には、次のような問題点があると考えられる。
 一般に、参入規制と価格規制は、規制の中でも中心的なものであるが、業務独占規定は、当該資格を有しないものを市場から制度的に排除するという、参入規制的要素を色濃く持つものである。その結果、限られた有資格者が特権意識を持ち、当該資格者による特殊なムラ社会が形成されがちである。そうした市場においては一般に競争が排除され、サービスの質が低下し、価格が高止まりしがちである。
 試験に受かり、厳格な法的規律に服する、特定の名称を有する資格者が存在し、国民に良質で安心できるサービスを提供するであろうことに問題はない。しかし、その他の者を市場から事前に排除することまでは必ずしも必要ではない。国民の教育水準も上がり、また民主化の進展や市場経済の浸透が進んだ現在においては、サービスの需要に関する選択を国民に委ねても問題のない分野が多くなってきている。権威ある有資格者が提供するサービスを好む国民は、業務独占規定がなくても資格者に依頼するであろう。無資格者であっても必要かつ十分なサービスの提供を受けられると判断する国民は、無資格者が法律上の規律に服さないことも承知した上で、自己の責任でそうした者に依頼すればよいのではないか。有資格者も無資格者も市場という共通の土俵で競争することによって、全体としてより良いサービスが、より安価に提供されるようになるのではないだろうか。
 以上が資格制度による業務独占に関する基本的視点であり、現在では現行制度の制定当初に想定された業務独占の利点よりも、もはや弊害の方が大きいものもあるのではないかと考える。特に弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士など、法律関係事務や法律に基づく書類作成・手続き等について業務独占規定を有する資格制度については、その傾向が強いのではないのだろうか。
 以下に述べるよう(省略)に本年は、数多い資格制度の中でも特に広範な業務に携わり、国民にとって最も身近な存在であると考えられる行政書士に限って検討を行ってきたが、同様の議論は資格制度全体に適用されるべきものである。弁護士については、既に委員会は意見を提出しており、規制緩和推進計画にも盛り込まれている。本報告においても法務分野で外国法事務弁護士やいわゆる隣接法律専門職種に係る規制緩和について再度言及しているが、その他の資格制度についても今後、政府部内において個別具体の議論が進められるべきである。
 さらにこうした業務独占に関する見直しが進められる過程で、各資格制度の実態を踏まえてその垣根を低くし、相互参入が可能になるということは当然の流れであると考える。あまりに細分化された業務提供は、利用者である国民に不便を強いることともなる。各資格制度間の兼業や相互参入をより緩やかなものとし、いわゆる法律総合事務所の設立を可能にするなどワンストップでのサービス提供に対する要望に応えていくことが必要である。