年俸制と成果主義人事制度
〜単純に年俸制を導入しても社員は活性化しない〜
Updated on 3/24/99

 最近、年俸制を導入したいという経営者の声を頻繁に聞くようになりました。こうした声からは「年俸制を導入すれば、社員が活性化して頑張るだろう」という期待感が感じられますが、実際には年俸制を導入するだけで社員の動きが変わるということはありません。もし組織の活性化を意図して年俸制の導入を検討しているのであれば、それよりも先に、社内コミュニケーションの改善、経営計画の浸透、役割の明確化などの課題に優先的に取り組むことが重要です。とはいえ、年俸制は激しい経営環境の変化に対応したダイナミックな報酬決定を行うことができるという大きなメリットを持っています。そこで今回は年俸制を導入し、ドラスティックに成果主義の人事制度を構築するためのポイントについて解説します。

1 職務価値のランキングを設計する〜責任等級制の導入〜
 年俸制の最大のメリットは「担当する職務の責任・価値の大きさに応じて、年俸額を毎期洗い替えすること」ですから、年俸制を導入する際にはこの職務価値の高さを測定する必要があります。これが「責任等級」です。特に年俸の切り下げを行おうとすれば、それ相当の合理的な理由がなければなりません。「前期は成績が悪かったので年俸を10%カットします。」と単純に行うのではなく、「あなたの仕事の内容、責任の大きさは昨年に比べると小さくなり、等級が1つ下に下がるので年俸は○○に下がります。」という説明が必要になるわけです。そのための職務価値のランキングを作ることが年俸制等の成果主義人事制度を導入するためのスタートになります。

2 責任等級毎に年俸の上限及び下限を設定する
 年俸対象者全員の責任等級が決まったら、その責任等級毎に年俸をいくら位支給するかを決めていきます。その際、「責任等級の1級は○○○万円」と単一で決める方法もありますが、このやり方は人事異動などの場合に年俸の設定が難しくなりますので、「○等級の年俸は最低○○○万円から最高○○○万円まで」と範囲を持たせて設定することが通常です。

3 仮払精算方式を採用する
 通常あまり指摘されていませんが、年俸制には隠れた大きなデメリットがあります。それは「報酬の硬直化」です。

 例えば年俸を1,200万円と定め、毎月その12分の1づつを支給するとした場合、仮に業績が悪化したり、この社員の成績が今期非常に悪かったとしても、今期の報酬の中で調整することはできず、翌年度の年俸設定の際に初めて成績が反映されることになります。

 月給と賞与の組み合わせで賃金管理を行っている場合には、賞与が調整部分になり、最悪、賞与の支給がゼロということも十分に考えられます。しかし年俸制を採用した場合には「年間でいくら支給する」という契約ですから、業績が悪いからといって年俸を期中に一方的に下げることはできません。つまり、通常の月給+賞与という構成の報酬体系の持っている調整機能が年俸制では使えない(つまり会社業績が悪く一般社員の賞与が大幅カットになったとしても、年俸者は満額支給というおかしな状況になる)訳です。そこで年俸制を導入する際には、支給方法として『仮払・精算方式』を採用することが重要です。これは年俸の構成を基本年俸と預かり年俸の2つに分け、当年度の成績に応じて、最終的な年俸額が決定されるというものです。

a.基本年俸
 年俸の80%を基本年俸として、その1/16を毎月支給。2/16ずつを賞与時に支給。
b.預かり年俸
 年俸の20%を預かりとして、期末の評価を反映させる。評価結果に応じて、例えば預かり分の0%〜200%の範囲で支給する。

 つまり今期年俸が1000万円であるとすると、その20%にあたる200万円は預かり年俸とし、残った800万円の1/16である50万円を毎月の給与として支給、2/16である100万円を夏期・冬期賞与において支給します。そして期末に会社業績および本人の評価結果を判断し、預かり年俸を最低0円から400万円の間で支給するということになります。通常、年俸制というとプロ野球のように年俸を12分割し、毎月支給する方法を想像しますが、実績評価結果及び会社業績が当年度の報酬に反映されないという大きな欠点を持っているため、企業の人事制度としては避けた方が良いでしょう。

 このように年俸制を採用する際には、多くのデメリットや前提条件があることを認識した上で、慎重に導入を進めることが重要です。

名南経営センター 大津章敬webmaster@roumu.com