ポイント制退職金の設計
Updated on 2/24/97

 本給連動型の退職金は賃上げの影響を複利で受けていくため、文字どおり雪だるま式にふくれ上がってしまいます。このようなことは多くの経営者は十分承知しているため、第2基本給や疑似基本給などを作ってなんとかこの膨張を回避させようとします。しかしその結果もっと大切な賃金体系を崩壊させてしまい、ジレンマに陥ります。毎月支給する賃金が一番最後の退職金のためにおかしくなっては本末顛倒です。やはり退職金は本給分離型が望ましく、その本給分離型の代表例が今回ご説明するポイント制退職金です。

1)ポイントとする項目
 ポイントとする項目は一般的には『勤続ポイント+累積ポイント』です。
※勤続ポイントは文字どおり勤続年数に応じたものです。
※累積ポイントは、毎年の貢献度を積み上げるものです。一般的には、能力等級や役職の在籍1年につき○ポイント、と決めて累積させる手法が使われています。
※このしくみは年功反映と実績反映のバランスをどうするかで、年功主義的にも実績主義的にも対応できます。

2)ポイント制退職金導入の大まかな手順
a)モデル退職金表を設計。勤続ポイント、能力等級や役職区分と、そのそれぞれのポイントを検討してモデル(18才入社、定年まで)退職金表を作成します。
b)既得権(移行時持ちポイント)を算出します。
c)人事台帳を整備して、今後の等級や役職の在職年数を明確にします。これは言うまでもなく、ポイント算定にあたりいつ昇格や昇進をしたかを記録しておくことが必要になるからです。

3)現行制度からの乗せ替え
 現在、本給連動方式で退職金を運用している場合は、賃金制度の改定とともに退職金や賞与の算定方式を変更する必要があります。この場合すでに運用している退職金制度を改定すると「既得権」の問題が生じます。退職金制度の変更は明らかに労働条件の変更に当たるため、不利益変更は原則としてできません。つまり従前の退職金支給の基準を乗せ替え時点において下回ることはできないのです。しかし、基本給連動型の退職金とはいっても、将来の確定した額を約束している訳ではないので、今後の方向については労使協議のうえでの改定は可能です。それともう一つの既得権があります。それは現状で算定基礎となる賃金が凍結されたと仮定し、現在の規定による係数をそれに乗じて計算された退職金た金額です。これが将来の退職時点で旧規定の方が有利となる場合(特に定年間近の人が該当することが多い)がありますので、これも既得権として保証する必要が出てきます。(我々はこの二つを絶対既得権と論理既得権と呼んでいます。)この対策策として、5年程度を移行措置期間とし、新旧の規定のどちらか多い方を支給するという方法も考えられますが、基本給が大幅に変更された場合は、算定基礎となる賃金の換算措置を設ける必要があります。例えば「今後5年間の旧規定における退職金の計算にあたっては、「本給の80%をその対象とする」等の規定を設けておきます。この措置を設定しないと、基本給の大幅アップにともない退職金支給額が跳ね上がってしまいます。
 さて、ポイント制に切り替える場合は具体的には次の手段をとります。旧規定からの移行にあたっては、移行時現在の既得権を「既得権ポイント」として各人別に算出し、今後はそのポイントに役職(職能等級)ポイント等を加算します。